佐伯の強みを活かす観光振興

一般質問

以下は、2026年3月定例会で「佐伯の強みを活かす観光」について、私が行った一般質問の要旨です。

佐伯市行政における最上位計画として位置付けられる「総合計画」は、市が進める取組や事業の根拠となる基本的な考え方です。もちろん、観光行政においても、そのバイブルとなっています。

少し長くなりますが、その総合計画には、以下の様に書かれています。

佐伯市のツーリズムは、最大の『強み』である「食」と歴史・自然を柱に取り組んできました。
佐伯は、別府・由布院のような観光地ではないことから、従来からの観光施設に加え、農林水産業や造船業等、地域の産業を観光化することで観光業から観光産業への転換を図っていく必要があります。
加えて、「佐伯の殿様浦で持つ」と言われるほど、長い年月をかけ自然と共生してきた歴史や文化を他地域にない佐伯の「強み」として押し出し、SDGsやオーガニックを観光素材とし、情報発信や誘客につなげていくことも重要です。

また、その目標数値も示されています。具体的には、観光地や施設に「何人入ってきたか」を示す指標である「観光施設等入込客数」は来年度2027年度において、年間145万人としています。
この様に、佐伯市は担当部署名を「観光ブランド推進部(質問の翌期に「商工観光部」へ改名)」とまでして、いろいろと観光に力を入れていました。

最近、日本を訪れる外国人観光客が初めて4千万人を突破し、過去最高となったそうです。有名観光地ではオーバーツーリズムも指摘され始めています。

ところが、過去の佐伯市の観光客数が、以下のグラフの様に、回復基調にあるとは言え、年間125万人と、コロナ禍以前の水準まで回復してません

※数値は、主に「まち・ひと・しごと創生総合戦略」「さいきツーリズム戦略」「一般質問の回答」などから引用しています。

全国のあらゆる市町村も観光行政に力を入れていると思います。この様な厳しい地域間競争の中では、私は、佐伯の「真の強み」を活かし、それを研ぎ澄まさないと、なかなか観光客を増やすことは難しいと考えています。

2026年2月に市役所で「ふるさと納税の先進地である都城市担当職員によるセミナー」が開催されました。以下が、その概要です。

都城の課題は、「全国的に市の知名度が低く、そのため、観光・物産・移住施策に悪影響が出ており、その問題の解決」が、市の最重要テーマだったそうです。
ただ、目指しても、激しい自治体間競争の中で、簡単には全国一を達成できはしません。

そこで、都城は、市の『最大の強み』、である全国的に有名な「宮崎牛」と「黒霧島」だけを利用し、「肉と焼酎」の一点突破型で「ふるさと納税の返礼品」を売り出したそうです。
この施策により、知名度が増し、そのシナジー効果が観光振興にも波及し、「道の駅都城」に来訪する観光客数が、2023年から現在までで172万人を達成しているそうです。

佐伯の観光振興もこの事例と同様のことが言えると思います。そこで、佐伯市と近隣市である臼杵市で、観光行政を比較してみました。
結論としては、佐伯市と臼杵市では、佐伯市の強みである「食・歴史・自然」は、臼杵でも同様に取り上げられていました。

佐伯市で取り上げている「強み」は、都城市で言う差別化された「売り」とは言えず、どこの自治体でも一般的に掲げられている方針だと言えます。
言い換えると、「食観光」「エコツーリズム」「さいき桜まつり」などの観光施策は、一時的な集客や地元の振興に繋がる部分もありますが、持続的な観光振興にはあまり繋がっていない可能性があります。

一方で、佐伯市の観光施策において、他の自治体にない、都城でいう「肉と焼酎」の様な佐伯市の「強み」の一つに、「サイクルツーリズム」が挙げられます。
また、「サイクルツーリズム」とのシナジーを考慮して「スポーツ・文化ツーリズム」を事項において詳しく説明をしたいと思います。

繰り返しとなりますが、観光行政において、佐伯市の「強み」を活かした観光施策が、他の自治体との競争において重要です。

サイクルツーリズム

佐伯市において、サイクルツーリズムを推進する「強み」があります。
佐伯には903平方キロという九州一広いサイクリング・フィールドと、加えて、なんと言っても、毎年10月に開催される「ツール・ド・佐伯」の知名度があります。
「ツール・ド・佐伯」は、千人を超える規模の集客があり、前泊する参加者が多いイベントです。

その起源は、2025年に「第34回」として開催された大会のルーツにあたる第1回大会は、今から30年以上も前の1991年にさかのぼれます。
もともとこの大会は「九州チャレンジサイクリング大分県大会」という名称で県内、各市の持ち回りで始まり、2011年の佐伯市開催以降、固定開催となり、現在の「ツール・ド・佐伯」という愛称も使われるようになったそうです。

1991年の大分大会は、市民参加型イベントとしての先駆け的な存在の一つと言えるでしょう。
当時は、観光と自転車を掛け合わせた「サイクルツーリズム」という言葉も一般的ではなく、地域の自然や食を楽しむ今のスタイルは、この時期から徐々に形作られて来たようです。

また、「サイクリング」と「食」の掛け算で、両者の「強み」を増している典型的な事例とも言えます。
具体的には、「寿司」をはじめ、海の幸・山の幸が豊富なため、「日本一エイドが豪華な大会」の一つとしてサイクリストの間で評価が高いと聞きいています。

提案

さらなる、サイクルツーリズムの「強み」のブラッシュ・アップのために、一般質問内で、以下の提案を行いました。

  • 期限切れが予定される自転車推進活用計画に代わる計画を作り、それを基に、モデルルートのプロモーションの強化や、ナショナルサイクルルートの設定を力強く推進すこと
  • 「さいきりんぐ」というサイクルツーリズムのホームページの内容充実や、更新頻度を上げることと共に、日程・エントリー・過去のエイドのメニュー・宿泊予約まで全て完結するようなワンストップ化を行うこと
  • 予算の関係があるが、自転車の女子プロチームは黎明期で設立のチャンスであり、女子プロチームを利用してサイクルツーリズムの情報発信力を増すこと

スポーツ・文化ツーリズム

佐伯市の強力な支援もあり、文化関係は別として、スポーツ関係の件数は順調に伸びている様です。確かに、総合運動公園は、スポーツ施設の充実度やインターに近い地の利はあると思います。
ただ、スポーツや文化面で佐伯市の「強み」はあまり多くないと考えます。そのため、このままでは、今後も合宿などへの支援を継続していく必要があるのではとも思っています。

スポーツツーリズムの他市の状況ですが、例えば、延岡市は陸上、日南市はマリンスポーツなど、スポーツ種目について特化・特色を持っています。
同様に、佐伯市にはサイクリングという「強み」があります。スポーツツーリズムを考える場合、強みを持つサイクルツーリズムとの掛け算で考えることも大切だと思います。
サイクリングコースの環境も整っているし、サイクルツーリズムも推進しており、相乗効果も期待できます。

国内において、自転車のプロチームは20チーム強、大学の競技志向の自転車部は50校ほど、高校体育連盟の自転車競技専門部に所属している学校は200校以上あるそうです。
プロにおいても、韓国は日本と同程度のチーム数、自転車製造王国である台湾にもプロチームはあります。

提案

佐伯市の「強み」であるサイクルツーリズムを、スポーツツーリズムにおいて利用すべきと考えます。
ついては、現在の野球やサッカーのリピーターに加え、自転車に関する大学や高校、台湾・韓国を含む国内外のプロチームの合宿向けに、集客を図る提案をしています。

釣り観光は「さいきツーリズム戦略」のエコツーリズムに関連する項目で、ほんの少ししか触れられていませんが、釣り客と観光行政に移りたいと思います。

佐伯市の「最大の強み」である釣りの環境

佐伯市は、豊後水道に面し、島しょ部を除き本土一長い270キロに及ぶリアス式の海岸線を持っています。水深も深いことから市場に上がる魚種も350種と非常に多種となっています。
特に鶴見や米水津は、都市圏の人にも「釣り人の聖地」と呼ばれるほど優れた釣り場です。言い換えると佐伯市の「最大の強み」の一つと言えます。

そのため、釣り客も多く、市内の釣具店に集まる客数だけでも、優に年間30万人以上と言われています。市外の釣具店や、当日、釣具店に寄らないルアー釣りの人を含めると、かなりの数になっていることも想像に難くありません。
この数字は冒頭で聞いた観光客数125万人には含まれない数字で、比較してもかなり多いことが解かると思います。

一部釣り客のマナーの悪さもたびたび問題となっていました。改善傾向にあるとは言え、波止場やトイレを汚す、車を狭い路上に駐車する、漁の邪魔となる、使用が禁止されている仕掛けを使うなど、依然、問題になることもあります。

一方で、佐伯は、シマノ・ダイワ・がまかつなど大手の釣具メーカーやマルキユーなど餌のメーカーが毎年大会を開催するほど、全国的に有名な釣り場となっています。
そのため自然に、大分県内、福岡・熊本・宮崎などだけでなく本州からも、釣り客が多く集まってきています。

釣り観光の勧め

2026年2月15日付けの日経新聞の記事を抜粋し紹介します。

日本生産性本部の「レジャー白書」によると2024年の釣り人口は540万人
漁師は12万人とされるが、日々漁に出ている人はこれより少なく、釣り人は漁師の50倍はいるとされる。

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美しい海に新鮮な魚介、漁師が働く姿など漁村には都会の人が憧れる財産が多くある。
ビジネスの視点からみるとして、LINEヤフーの川辺会長は「頼んでもいないのに来てくれる人たちをもっと大事にした方がいい。収益化で共存共栄はできる」と言う。
資源管理に加え、釣り人を漁村経済の応援団とする新たな工夫が期待されている” 

「観光」は関係人口を育てて、地域経済の発展に寄与するとして、観光行政を進める一つの動機となっています。
正に、釣り客は代表的な観光リピーターであり、佐伯は、裾野の広い関係人口が既に育っています

観光は「強み」である「地域資源」の上に成り立つ産業です。「強み」を無視して、観光行政は成り立ちません。
ところが、過去から佐伯は釣り人の聖地といわれ、無視できないほどの釣り客が来てくれているのに、現状、佐伯市は、この「最大の強み」を活かした釣り観光振興を行っていません。

釣り観光は、マナー改善や資源管理の徹底の意味でも、今日取り挙げたサイクルツーリズムやスポーツ・文化ツーリズム以上に、取り組むべき最重要課題と考えます。市政もこの前提で行われることを期待します。

提案

佐伯市の「最大の強み」である良好な釣り場を利用した、「釣り観光」について以下の提案を行っています。

  • 佐伯市との合併前に鶴見町で毎年実施されていた様に「ファミリー向けの釣りイベント」を開催。釣具メーカーなどとの協業も検討するのど、イベントにより宿泊や消費を促す積極的な観光展開
  • イベントで、釣りマナーの案内や釣り場の掃除なども行ったり、市で釣りマナーを解りやすく解説するチラシを作成し釣具店・コンビニ・波止場近隣のトイレなどに置いておくなど、釣りマナーの啓発。使用頻度の高いトイレは、地域に委託するのでなく、市が責任をもって清掃すること
  • マナーの啓発やトイレの案内はもちろん、初心者へ釣り方・釣り道具・釣り場のアドバイスや、飲食店・宿泊場所の案内などを行う「フィッシング・アドバイザー」の配置
  • イベントの開催原資や、釣り場看板、マナーのチラシ制作、清掃の経費の捻出のため、釣り客から任意で協力金を募る制度の検討

一般的に、観光イベントはスポット的・直接的な経済効果があります。対して、産業育成はストック的で持続的な経済効果を生みます。せっかく観光に予算を付けるのであれば、観光振興を経済振興へ利用することも考えるべきでしょう。

例えば、市役所内の観光係と企業誘致係が連携して、サイクルツーリズムからシマノやヤマハ発動機など自転車関連産業の工場誘致を図るなど、観光政策から波及して産業育成に繋がることが考えられます。
また、佐伯市が「釣り人の聖地」である強みを利用し「釣り観光」を育て、「佐伯の魚」のブランド価値を醸成し、結果として「魚価」を上げ、漁業に携わる人の「生活を安定」させることもできます。

このように単に観光振興を推進するだけでなく、また、地場産業を観光振興に利用するだけでなく、逆に、観光を使いながら、地場産業の成長へ資する施策、持続的な経済振興を促す施策が必要と考えます。

人口減少が急速に進む佐伯市にあって経済対策は、待ったなしです。
2026年度から作成を始める、新たな総合計画の完成を待つのではなく、釣り観光の新規取組みやサイクルツーリズムの強化など、できるところから始める臨機応変さが非常に重要となります。